税務調査110番本編では、経営者必見!税務調査には種類がある。様々な税務調査を徹底解説します。で、税務調査の種類について、任意調査や強制調査、予告調査や無予告調査について幅広に解説していますが、本記事では無予告調査の概要および対応方法について元税務署長が説明します。

前提として、下記のような対応は絶対に避けてください。
⇒ 調査を理由なく拒否する
⇒ 嘘をつく

税務署員の調査権限の概要

税務署員の調査権限の概要

税務署の調査通知は、電話を基本とし、無予告訪問、手紙などでも行われます。

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税務署員は、国税通則法に定める質問検査権を持っており、質問検査権に基づき、本人や取引先や関係者に、質問や、帳簿等の検査や、その提示や提出を求めることができます(同法74条の2ほか。査察の調査の場合は同法131条)。

実地の調査に当たっては、基本的に事前に連絡をすることとなっていますが(同法74条の9)、事前に連絡すると、取引資料などが隠ぺい改ざんされると見込まれる場合などは、無予告で調査することも国税通則法の下で許されています(同法74条の10)。

査察官が脱税事件として捜索等をする場合は、裁判所の許可を取ったいわゆる令状を持って(同法132条)、無予告で来訪します。

査察職員以外の税務職員の調査は、強制力を伴わない質問検査権の行使となります。つまり任意調査となるのですが、答えない、帳簿を提示しないなどの調査拒否に対しては罰金が定められていますので(同法129条)、納税者には調査の受忍義務があると解されています。

無予告調査への対応

無予告調査への対応

国税局の査察の調査ではないとしても、国税局の資料調査課の調査官や税務署の調査官が無予告で調査に来た場合、通常の調査ではないと思ってください。通常の調査は、一人か二人の訪問で行われますが、場合によっては10人以上、調査に動いている可能性もあります。

案件によっては、事業所、自宅、銀行、取引先、場合によっては愛人宅まで、同時刻に調査が開始された可能性があります。

今日は忙しい、という理由では帰ってくれませんし、説得的な理由ではありません。合理的理由なく調査を拒否した、と判断されないように注意しましょう。

忙しい場合は、その日は丸一日は無理なので、自分の対応は何時から何時までとしてもらう、その他の時間は税理士や経理担当の立会で帳簿等を見てもらうなどの交渉をして、少しでも調査に協力することで、調査を短期で終わらせることが最優先だと考えた方が良いでしょう。

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関係者から、調査官が来たがどうすればいい?などの連絡が来るかもしれません。その時は、調査に協力するように伝えましょう。

隠せば隠すほど、調査は深堀りして行われますし、抵抗しても、多少先延ばしになるだけで、自分から資料を出していかないと、どんどん関係者に反面調査が行われます。

反面調査が断りなく行われたと訴える方もいますが、納税者が資料の開示や説明義務を履行しなかったことが原因だとされ、また、法律上、反面調査に納税者の承諾を要するとはされていないので、違法にはなりません。

関係者に調査範囲が広がらないようにするならば、調査官が確認したいという資料は、早急に用意すべきでしょう。自分から、正しい所得金額を明らかにしていくという姿勢が必要です。

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会計資料や帳簿を見せないという対応をする方は、まずいないと思いますが、コピーさせないとか、貸さないなどの対応も、お勧めできません。情報漏洩の可能性などの理由を主張しても、その可能性が相当にあるという根拠が証明できなければ、調査を拒否している、妨害している、という評価にしかなりません。

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