調査が開始され、初日にどのようなことが行われるのか、その概要と初日で臨場調査を終わらせる方法についてお話します。

臨場調査

臨場調査

無予告調査と予告調査

調査の目的は、所得金額の確認ですから、無予告調査でも予告調査でも、調査官がやることは大体同じです。
ただ、無予告調査の場合は、事前に納税者から調査の承諾を取っていないので、まず、調査の承諾を求められます。無予告調査も法で許容されているので、嫌だ、という感情的な理由だけでは引き下がってくれず、粘り強く説得されることになります。

どちらの調査にしろ、調査はまず、事業概況の聴取から始まります。

調査事項

・事業は、どのように立ち上げ、特色や現状などはどうなのか、取引先はどこなのか
・社長・事業主としては、どのような経歴やスキルを持っていて、事業への関与度合いや経営方針(+人柄)などはどうなのか、生活状況はどうなのか
・各役員、従業員の役割は?同族法人との取引状況は?
・経理は誰がどのようにやっているのか

などについて調査官は質問し、あるいは見極め、調査において特に確認すべき点を見極めます。

質問への対応としては、調査官も世の中の全業種に精通しているわけではないので、どういう仕事で、どういう経費が掛かるなど、業界の特色や、調査対象期間中の自分の事業の状況について、事実を正確に、資料なども用いて、よく説明することが必要です。

概況の聞き取りが終わると、事務所や作業所を見て回るなどしますし、その際に、机の中や金庫内の確認や、使用している機械や仕掛品や在庫の確認なども行われます。

次に、帳簿の確認が行われます。経理システムや取引先とどのような書類等がやり取りされているのかや、記帳が正しくされているか確認します。

パソコンを経理や作業に使っている場合、パソコン内のデータも調査の対象となり、データは調査官が持参したUSBなどにコピーされます。場合によっては、スマホでのやり取りについても、確認が行われます。
重加算税対象となる不正事実が想定された場合は、聴取書(陳述書、申述書など)に署名を求められこともあります。(この点については、また後日とします。)

1日では、請求書や領収書が正しく帳簿に計上されているかどうかなどをチェックしきれないので、紙で保存されているそれらの書類については、借り上げて、署に持って帰ります。

対応の注意点

調査官が以上のような調査を行う権限は、質問検査権に基づくものです。任意調査ですので、応じるかどうかは納税者の選択になりますが、一応罰則規定も設けられていますし、納税者が調査官の質問や要望に答えなければ、調査官は取引先への調査によって解明していくので、調査の早期終了や取引先へ負担を掛けないことを考えるならば、調査に協力した方が得策といえます。

調査に非協力であればあるほど、税務署としても折れるわけにはいかないので、更正処分や決定処分に向けた徹底的な調査が行われる可能性を高めることになります。

調査初日で終わらせるために

調査初日で終わらせるために

対応の仕方によっては、その日で実質的な調査を終わらせることもできます。

まず、可能であれば、調査前に申告を見直し、申告計上漏れなど、間違っていた処理については調査時までに修正申告をし、それ以外の間違いはありませんという状況で調査に臨むことができれば最良です。

申告を見直して、修正申告を済ませることまでの時間がないかもしれませんが、そこまでできないとしても、調査対象期間の帳簿や関係資料は全部揃えて、面談時の机に積んでおいてください。

その他に、調査官が見たいもの、確認したい事柄を整理して、持って帰ってもらう資料はコピーしてファイリングして、全部、机の上に置いておくことです。修正申告した場合は、その説明資料も必要です。

調査官も、1事案に投下できる調査日数は限られているので、調査対象期間の全勘定科目をしらみつぶしに確認しようとは思っていません。

確認したい事柄としては、例えば、「この年の外注費が多い原因は?」「この年に高額資産を買っているけど資金繰りは?」「同業者より利益率が低いし、特定の月が低い原因は?」「この利益・役員報酬で、どうやって生活しているのか?」「同族法人との契約金額は何を基準に決定したのか?」「金額として100万円以上の現金取引やラウンド数字はチェックしよう」などなどで、確認しようとする事項は、事案に応じてある程度限られてきます。

このような点で説明が必要と思われるものについては、資料としてレポート的なものを用意し、事実関係を明らかにする契約書、領収書等のコピーを用意してファイリングしておき、持って帰ってもらうとよいでしょう。間に合わなければ、頭の中で整理しておき、スムーズに説明できるようにして、必要な資料はなるべく早く提出しましょう。

また、調査事項については、調査官は署に帰ってから上司に報告し、報告書も作成するので、各売上先や仕入先等の主要な取引先の一覧、月別取引金額一覧、ポイントとなる取引の証拠資料のコピーなどが用意されていれば、上司へ説明、説得や報告書類の作成も簡単になり、調査官も好意的に接してくれるのではないでしょうか。

上司がOKと言わなければ調査は終わりません。上司からは調査前にこの点を確認しろという指示があったはずです。特にその点については、上司が納得できる資料や理由を用意することが、調査の早期終了の一方法です。

初日で、今日で調査を終わりますと言われることは、上司の決裁もあるので普通はないのですが、事前に修正申告もされており、特に問題点を見つけることができなければ、報告書作成のために書類を借りて行くだけで、実質的な調査はその日で終わります。

日頃から適切に経理を行っておけば、調査で慌てることはありませんが、調査の準備作業や当日の対応については、このような対応を専門にしている税理士に任せるのが一番です。