税務職員が調査にやってきました。さて、彼らはどのような権限をもっているのでしょうか。

今回は、税務職員に与えられている「質問検査権」という権限と、税務調査における納税者の権利が、法律上どのように規定されているか、についてお話します。

質問検査権

質問検査権

調査における税務職員の権限については、国税通則法74条の2に定められており、その条文の概要は、次のとおりです。

「国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の当該職員は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、条文に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。」

相続税、贈与税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、石油石炭税、国際観光旅客税、印紙税、航空機燃料税、電源開発促進税などについても、同法74条の3から6において、概ね同様の規定がおかれています。 質問検査権のほかに、同法74条の7においては、「国税庁等又は税関の職員は、国税の調査について必要があるときは、当該調査において提出された物件を留め置くことができる。」旨定め、物件を預かって保管するという権限も定めています。

納税者の権利

納税者の権利

納税者の権利についてはどうでしょうか。

国税通則法には特に定めがなく、強いてあげれば、同法74条の8において、質問検査権は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない旨の規定があり、また、74条の9では、原則として、調査の際には、日時などを事前に連絡することを税務職員に義務付けています。ただし、74条の10では、一定の要件に当てはまる場合は、通知を要しないとも規定しています。

憲法38条1項は「何人も自己に不利益な供述を強要されない」と規定し、いわゆる黙秘権を保障しているのですから、質問検査権の行使としての質問に対して、何も答えないという対応をとったとしても構わないのでしょうか。また、税務署の調査は令状に基づかない任意調査ですので、協力しないという対応でも問題ないのでしょうか。

この点については、国税通則法28条2号では、質問検査権における質問に対して答弁を拒んだり虚偽答弁をしたり、又は検査等を拒み、妨げ、若しくは忌避した者については1年以下の懲役、又は50万円以下の罰金に処すると規定しており、間接的な強制力により、質問検査に対しては受忍義務が生じています。

このような質問検査権に関する規定については、憲法違反だとして最高裁においても争われたことがありますが、憲法違反ではないということが判例として確定していますので、調査に応じない、帳簿を提示しない、答えないなどという対応は、上記の罰則規定に抵触する可能性があることに注意しなければなりません。

質問検査は、脱税を見つけるというより、正しい所得金額や税額を探求するために行われるものですので、正しい金額が不明であればあるほど、その行使の範囲はどんどん広がっていきます。したがって、調査への対応としては、調査を短期間で終わらせ、また、関係者にも迷惑をかけないためにも、自ら積極的に正しい金額を明らかにし、証明することが、大変重要なこととなります。