今回は金融庁の免許が必要な保険会社から保険商品の販売代理を行う保険代理業の税務調査の傾向と対策についてお話しします。
保険代理業の業務は, 自己が代理人契約を結んでいる保険会社が開発した商品を、加入者の開拓し販売して、保険の各種サービスを提供することによって販売手数料を受取るものです。会計税務上は売上が手数料収入だけで一見単純なようですが、扱う商品が多種にわたり、色々なキャンペーンもあり複雑化している傾向があります。
この保険代理業の税務調査では、大きく4つが論点となりやすい傾向です。
目次
収益の計上時期と計上額の妥当性
手数料収入の適正計上時期と適正額が調査対象となります。収益計上時期は、保険代理店が保険契約者から保険契約書を受領し、これを保険会社に取り次いで、はじめて保険会社と被保険者、保険契約者との契約が成立することとなるわけです。
つまり、保険契約の開始日=保険契約が成立日=収益計上時 となります。手数料収入の額は、大部分は集金した保険料から毎月精算入金されるため、収入の期問帰属は他の業種に比べて明確です。
保険手数料収入のもとになる保険料の受取日は,保険会社の保険金支払義務の発生日となります。保険会社の手数料明細に基づき, 預金通帳の入金を確かめ,売上計上の網羅性と期間帰属の妥当性を確認します。
架空人件費の有無
保険代理店は小規模なものが多く、ビジネスモデルの構造上、手数料収入に占める人件費の割合が高くなる傾向がみられます。そのため、保険代理業における税務調査では、在籍しているとされる社員が本当に実在しているかどうかが大きな論点となってきます。
この場合、税務調査官は、組織図、履歴書、給与台帳、営業日報等をチェックし、従業員の存在を確認し、架空人件費の計上がないか?をチェックしてきますので、普段から勤怠管理など含めてすぐに該当書類を提出できるよう心がけておきましょう。
また架空人件費以外にも役員の人件費に関しても税務調査の対象となるため、あわせて参照してみてください。
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最も注意しなければならない紹介料・リベート
保険代理業では、保険加入の紹介者に対する謝礼を現金または金品等により行うことがあります。現金支払いの場合には、厳しい反面調査が実施されて架空交際費・外注費とされる可能性があります。
また、個人に対する紹介料は原則として交際費となり、中小企業の800万円の定額控除を超える可能性があります。定額控除を超えると、超えた紹介料は費用にすることができません。ただし、相手が個人であっても以下の3つの条件を満たせば情報紹介料として費用にすることができます。
1.紹介料が予め締結された契約に基づき支払われたものであること
2.紹介料を受けるための条件が契約で具体的に明らかにされていること
3.紹介料の額が対価として相当な金額であること
この場合は、税務調査においては紹介者との契約書の有無と内容が重要なポイントとなってきます。予め専門の税理士に契約書をチェックしておかれることをお勧めします。また、保険料は保険会社の料率が定まっているので値引きは禁止されています。
しかし、現実には値引きや大口契約によるリベートの支払を要求される場合もあります。代理店の発行する保険契約者への保険会社名の領収証は、値引きしていても正規の保険料が記載されており,相手方が申告をせずに裏リベートとなりやすく、この点が重点的に税務調査されます。リベートの相手先を明かせない場合には、使途秘匿金課税されないように、予め役員報酬の支払いの中から紹介料を払うことも方法の1つとなります。
事務所兼自宅の地代家賃が適正か?
保険代理業で発生する経費として大きいのは支払家賃です。比較的小規模な保険代理店は自宅を店舗にしているケースがあります。その場合には、事務所利用面積から家賃の金額が適正かどうか確認されます。一般的には、自宅の見取図を基に事業として専属で使用する面積割合を求めた資料を準備しておくと税務調査はスムーズに行われます。
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