従業員への給与、賞与、決算賞与、退職金にまつわる税務調査上の論点を整理(前編)に続き、今回のテーマは会社の行事等にまつわる税務調査上の論点です。

例えば、会社では社員旅行や新年会、忘年会があったり、その場で勤続に関する表彰、インセンティブ支給などが行われることもあるでしょう。

また、そのような定例行事に限らず、例えば災害など不測の事態にあった場合に、お見舞金を受け取ることもあります。このような場合に発生した金品等の動きは、税務調査の際にどのように取り扱われるのかを知っておいて損はありません。ここでは代表的な12のテーマについてそれぞれ解説していきます。

1:慶弔、禍福に対する金品の支給

慶弔、禍福に対する金品の支給

社員へ支払う結婚祝い金や近親者が亡くなった際の弔慰金など慶弔禍福と言っても様々な種類があり基本的には福利厚生費となります。

災害により被害を受けた従業員やその親族等に対して一定の基準に従い、災害見舞金品を支給した場合は福利厚生費として損金の額に算入することができます。 また、法人の専属下請先の従業員等や親族等に対して支給した災害見舞金品も同様に損金の額に算入されます。

一方で、個人が支払いを受ける災害見舞金で、その金額が受贈者の社会的地位、贈与者と関係等を照らし、社会通念上相当と認められるものについては、課税されません。

●福利厚生費となるもの
慶弔見舞金規定等一定基準に従い、従業員(従業員であった者も含む)またはその親族に対して支給するもので、社会理念妥当なもの

●給与等となるもの
その金額が支給を受ける者の地位等に照らし、高額と認められるもの

●交際費となるもの
従業員以外の者に対するもの

2:慰安旅行

慰安旅行

社員間でのコミュニケーションやスキルアップ、営業目標の達成などで慰安旅行で催す事があると思います。
慰安旅行を行う場合も福利厚生費として扱う場合には一定の基準がありますので注意が必要です。

●福利厚生費となるもの
旅行期間が4泊5日以内で、かつ全従業員の50%以上が参加する場合

●給与等になるもの
特定の従業員や役員だけを対象としたもの
(役員だけの慰安旅行は役員賞与となる)
自己都合の不参加者に金銭を支給した場合には、参加者の分までもが給与等になる

●交際費となるもの
特定の従業員等のみを対象とするもので、取引先に同行すること等によって給与に該当しないもの

3:レクリエーション・新年会・忘年会

レクリエーション・新年会・忘年会

年末年始の忘年会や新年会、新入社員歓迎会などの行事、スポーツ大会や登山などのレクリエーションも同様に一定の条件が設けられています。

●福利厚生費となるもの
社会通念上、一般に行われているレクリエーションであって、通常必要な費用

●給与等になるもの
特定の従業員や役員だけを対象としたもの
自己都合の不参加者に金銭を支給した場合は、参加者の分まで給与等になる。ゴルフの費用は通常給与とされる。

●交際費となるもの
特定の従業員等のみ対象とするもので、取引先に同行する等によって給与に該当しないもの。

4:永年勤続表彰

永年勤続表彰

永年勤続表彰は勤続年数の長い社員を讃えるための制度です。一般的にはパーティー形式で行い記念品や旅行券を贈呈することが多いのではないでしょうか。

●福利厚生費となるもの(次の3つの条件をすべて満たすもの)
①旅行、観劇の招待、記念品の支給であること
②当該従業員等の勤続年数に照らし、社会通念上相当と認められる金額であること。おおむね10年以上の勤続年数の者を対象としていること
③2回目以降の支給についてはおおむね5年以上の間隔があること

●給与等になるもの
上記の福利厚生費の条件に該当しないもの

●交際費となるもの
特定の従業員のみを対象とするもので、取引先に同行すること等によって給与に該当しないもの

5:永年勤続者に対する旅行券の支給

永年勤続者に対する旅行券の支給

次の要件を満たしている場合には福利厚生費として損金に算入することができます。

●福利厚生費となるもの
①旅行の実施は旅行券の支給後1年以内であること
②旅行の範囲は支給した旅行券の額から見て相当なもの(海外旅行を含む)であること
③旅行券の支給を受けた者が当旅行券を使用した場合には所定の報告書に必要事項(旅行実施者の所属・氏名・旅行日・旅行先・旅行者等への支払額等)を記載し、これを旅行先等を確認できる資料を添付して会社に提出する
④旅行券の支給を受けた者が当該旅行券の支給後、1年以内に旅行券の全部または一部を使用しなかった場合、旅行券を会社に返還すること

●給与等になるもの
上記の福利厚生の条件に該当しないもの

6:創立記念・新社屋完成パーティー等

創立記念・新社屋完成パーティー等

創立記念行事などのイベントに係る費用については社内の行事であることを前提に、従業員の飲食費用(概ね一律であること)、下記の要件を満たす場合の記念品の費用を含めることができます。

●福利厚生費となるもの
①支給する記念品が社会一般的にみてふさわしいものであること
②記念品処分見込額が1万円(税抜き)であること
③一定期間ごとに行う行事で支給するものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること

●給与等になるもの
従業員に支給される記念品であって、上記の要件を満たさないもの

●交際費となるもの
上記の福利厚生費に該当しないパーティー費用

7:食事代

食事代

社員に支給する食事代も内容によって福利厚生、給与扱いなどに分かれてきます。

●福利厚生費となるもの
会社都合の超過勤務により支給される残業代であり、かつ社会通念上打倒なものは福利厚生費となる。
残業または宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてもよい

●給与等になるもの
会社が福利厚生の一環として支給する食事代のうち、残業代以外の食事代については給与とされます。
しかし、下記の要件のにあてはまる場合は所得税は課税されません。
①従業員等がその食事代の50%以上を負担していること
②会社が従業員等に支給した食事代の負担額が月額3500円以下であること
③食事を支給するのではなく、現金で食事代の補助をする場合には、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食あたり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合を除き、補助する金額が給与として課税される。

●交際費となるもの
会社が得意先等の接待、供応のために支出した食事代のうち1人あたり5000円を超える飲食代については交際費となります。

8:健康診断・人間ドック

健康診断・人間ドック

●福利厚生費となるもの
対象者をすべての従業員または一定年齢(35歳、40歳など)以上の者とし、かつ検診内容が健康管理上の必要から一般に実施されるものであること

●給与等になるもの
上記以外(オプション検査など)はすべて給与とされる

9:福利厚生施設の利用

福利厚生施設の利用

福利厚生施設には、理美容室、保養所、診療所、体育施設、レジャー施設等(契約施設を含む)があります。

●福利厚生費となるもの
原則として認められる。

●給与等になるもの
役員や特定の従業員のみを利用対象とする場合は給与とみなされます。

10:社員に対する値引き販売

社員に対する値引き販売

基本的には給与等とされます。
しかし下記の条件のいずれにも該当する場合には従業員等の所得税が非課税となります。

①値引販売価額が会社の取得原価以上であり、かつ通常の販売価額のおおむね70%以上であること
②値引率が一律または金属年数等に応じて合理的な格差になっていること
③値引数量は一般の消費者が自己のかじのために通常消費する程度であること

11:クラブ活動

クラブ活動

社内クラブやサークル活動の費用は下記のいずれか1つ以上の条件を満たしているかどうかが論点になります。
いずれも満たしていないクラブ活動にかかる費用を会社が負担した場合には、福利厚生費とならず、寄附金となります。
さらにいずれか1つ以上の条件を満たしたうえで、そのクラブ活動に通常要する費用を会社が負担した場合には福利厚生費です。
また、個人的費用や通常要する金額を超えて支出される費用については福利厚生費とならず、その性格に基づいて給与等あるいは交際費として取り扱われます。

①法人の役員または使用人で一定の資格を有する者が、その資格において当然にクラブの役員に選出されていること
②当該クラブ活動計画や運営上の重要な意志決定については会社の許諾を要する等、会社がその運営に参画していること
③クラブ活動に必要な施設の全部または大部分を会社が提供していること

12:金銭を低い利息で貸付けたとき

金銭を低い利息で貸付けたとき

役員または使用人に低い利息で金銭を貸し付けた場合、その利率が貸付を行った日の属する年の特例基準割合(国税が定める利率)による利率以上であれば、原則として給与として課税されんません。

①災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員または使用人に、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合
②会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって役員または使用人に対して金銭を貸し付ける場合
③特例基準割合による利率と貸し付けている利率との差額分の利息の金額が年間5000円以下である場合