期末に利益が出て、決算賞与を出す場合、3月決算の会社なら3月に支給すると当然損金処理できます。また3月中に支払えない場合には、1ヶ月以内であれば認められますが、この場合全員に支給する金額を提示していることが必要です。

そのため、金額と支給日を書いた「賞与支給通知書」などを作成し、従業員にサインしてもらうと税務調査がスムーズに進みます。このように従業員への「給与」「賞与」「決算賞与」「退職金」の一般的な調査方法と対応策について、経営者は基礎知識として知っておくべきでしょう。

従業員給与・賞与の一般的な調査方法と対応策まとめ

従業員給与・賞与の一般的な調査方法と対応策まとめ

従業員への給与や賞与に対して一般的にどのように調査が行われるか。どのような対策を講じる事ができるのかを8つの項目に分けて解説します。場合によっては事前準備に時間のかかる項目が多いので、1つ1つ抜け漏れのないようにチェックしておきましょう。

支給規程、雇用台帳、給与明細との突合

【調査方法】支給規定どおり算出されているか、支給規定内容が妥当であるかを確認されます。

【対策】支給規程が設けられていない場合や古い場合、規定の定めなしに変わっている場合は整備しておきましょう。

辞令、組織図、謄本との突合

【調査方法】出向・転籍の有無を確認や転差支給の処理がどうなっているかなどを確認されます。また、出向・転籍前後の役職の変動も確認されます。

【対策】出向・転籍の前後の待遇に関する書面が整備されているかを確認しておきましょう。

みなし役員の有無

【調査方法】株主名簿、職務内容、権限の確認、同族関係者の内容等をチェックして実質的な経営者(みなし役員)の有無を確認されます。

【対策】事前に税務上のチェックを行っておきましょう。職務内容や権限があいまいになっている場合は、事前に文書により明確にしておきましょう。

※同族会社、みなし役員についてはこちら

親族等である従業員

【調査方法】親族という理由だけで報酬や条件に差を設けていないか。いわゆるお手盛りがないかをチェックされます。特にその給与と職務内容については重点的に調査されます。

【対策】親族当人の職務分担を明確にし、給与が他の従業員と比較して妥当であることを立証できるようにしておきましょう。 親族等には、役員と事実上婚姻関係と同様の関係にある者、役員から生計の支援を受けている者等が含まれるので注意しましょう。

架空、水増し、過大人件費のチェック

【調査方法】従業員名簿、入社時の書類、履歴書、人件費台帳の閲覧、さらには住民票との照合などからの反面も含め、その従業員の実在性、本人への質問等により職務の内容を確認して人件費の妥当性を調査されます。

【対策】全従業員の個人データにかかわる資料の保管にばらつきのないように事前にチェックしておきましょう。従業員にヒアリングが入る可能性もあるので各従業員に各自の職務分担を正確に認識させておきましょう。

給与計算の正確性

【調査方法】源泉徴収税額について正しく行われているか臨場前のテストベースで計算チェックをして調査する場合があります。給与計算のシステムが適正に行われているかもチェックされます。

【対策】各諸手当控除の規程の整備、それに対する計算資料など関係資料(給与台帳、決算書、内訳書、概況書、源泉徴収納付書等)の整合性の確認をしましょう。

現物給与のチェック

【調査方法】通勤手当、創業記念品、食事代の補助、家賃補助などの現物給与については、福利厚生費、交際費、会議費、調査費など人にかかわる科目を重点的に調査されます。

【対策】現物給与として扱われる可能性があるものについては誤解を受けないように、客観的な規程を用意し、社内での承認手続きがあったことを示す書面を用意、かつその支出の必然性等を説明できるようにしておきましょう。課税・非課税の区分を整理し所得税の規程とも照合しておきましょう。

給与計算、源泉税のチェック

【調査方法】会社が作成する資料箋と実際の支給あるいは納付が合致しているか確認します。

【対策】従業員数が多く、手計算では誤りが発生する可能性がある場合は給与計算と資料箋の作成が同じコンピュータのソフトから行われるようなシステムの導入を検討しましょう。税務調査対策だけでなく経理負担の軽減にもつながります。 資料箋の作成は年1回なので十分に注意し、交付した相手にも内容について確認する時間をとりましょう。

従業員退職金の一般的な調査方法と対応策まとめ

従業員退職金の一般的な調査方法と対応策まとめ

従業員退職金の一般的な調査方法と対応策について6つのポイントに分けて解説します。

注意すべきなのは支給日前までに退職した人に支払えないと賞与規程等で定めている場合です。3月に決算賞与を出す予定にしていても、3月末に退職してしまって支払えない、といったケースはよく起こります。この場合、辞めた人の賞与が否認されるわけではなく、採用区分が同じ人全体が否認されてしまいます。

たとえば辞めたのがパートタイマーならパートタイマーの人全員分、臨時雇い等の人なら同じ身分の人全員分が否認されてしため該当する場合は要注意です。

税務署提出資料との突合

【調査方法】法定調書や確定申告の使用をあらかじめ調べてから調査に来る場合があります。特に複数箇所からの受給者や金額が多額の場合に行われる可能性が高くなります。

【対策】税務署への提出資料は会社の経理処理上、計上時期、金額等の整合性を確認してから提出するようにしましょう。

支払規程との突合

【調査方法】支給規程どおり算出されているか、および支給規程内容が妥当であるかどうかを確認します。支給規程の改定による打切支給の有無などがないかまで見られるので改定がある場合には注意が必要です。

【対策規程】支給規定がない場合や古い場合には整備しておきましょう。インターネットなどで類似会社の情報を入手し、功績倍率の比較検討をし否認されない体制を整えておきましょう。

議事録との突合、領収書、振込書との突合

【調査方法】議事録からは役員退職金の議決日、支給日を確認し、損金経理の時期の妥当性を確認します。

【対策】議事録の内容をあらためて確認し、必要に応じて整備および損金経理の時期を間違わないように気を付けて処理しましょう。

雇用台帳、給与明細支払調書との突合

【調査方法】勤続年数・採用形態・支給実績(過去か直近)等を検討し、退職所得控除の金額が妥当かどうか調査します。

【対策】雇用台帳および給与明細の内容に誤りがないか確認し、必要に応じて整備を進めましょう。

辞令、組織図、謄本との突合

【調査方法】出向、転籍の有無の確認や転差支給の処理がどうなっているかなどを調査します。出向、転籍の前後の役職の変動も調査対象となります。

【対策】出向・転籍の前後の待遇に関する書面の整備が必要となります。

退職所得の受給に関する申告書との突合

【調査方法】源泉税の処理が妥当かどうかを調査します。

【対策】申告書の提出がない場合、源泉は所得税が発生するので必ず準備しておきましょう。本人の押印箇所は実印である必要はないので三文判でも問題ありません。