今回の記事では、国税局や税務署の情報管理システムや、税務調査の調査対象者の選定方法について解説します。

KSKシステムでの情報管理

KSKシステムでの情報管理

税務調査対象者の選定については、細かな申告データについて情報処理されていない数十年昔は、調査官が1件1件の数年分の決算書等と申告書を検討して、調査対象者を決定していました。今は、決算書や申告データがKSKというシステムに入力され、蓄積され管理されているので、例えば業種ごとの利益率、外注費率、平均的な所得額など、申告者の様々な傾向等を分析することができます。

「KSKシステム」とは国税総合管理システムのことで、公開されている情報では、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、申告・納税の事績や各種の情報を入力することにより、国税債権などを一元的に管理するとともに、これらを分析して税務調査や滞納整理に活用するなど、地域や税目を越えた情報の一元的な管理により、税務行政の根幹となる各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入したコンピュータシステムであると説明されています。

このシステムにより、税務行政の効率化として、申告書等の入力(OCRの活用)や各種事務処理を行うほか、税務行政の高度化として、税務調査対象者の選定や滞納整理対象事案の抽出に活用するとされています。これにより、全国の課税データを呼び出し分析することが可能となっています。

税務調査対象者の選定

調査対象者の選定

税務調査対象の候補者については、KSKシステムを活用するなどして、近年における好況業種や脱税が多い業者などの一定の業種条件や、利益率が低調などの一定の要件を必要に応じて設定して抽出することができます。そのほか、投書等の情報提供(タレコミ)があった者などについても、内容に応じて選定されることとなります。

また、規模の大きな会社や個人については、確認事項が多いので、ある程度の調査の間を空けて、数年後にまた調査に行くこともあります。

申告者に対して調査が行われた割合は、実調率とも呼ばれていますが、国税庁が発表した情報によれば、法人も個人も2%以下となっています。調査は50年に1回も来ないということにもなりますが、調査対象者をどう捉えるかによって、そうでもないこととなります。

申告している納税者には、税額が零円だったり、規模が小さくて申告漏れがあったとしても高が知れているというように、調査の必要性が低い者も多数含まれています。このような者等を除いた上で、調査対象候補者を抽出しているので、問題がある者が抽出される確率はもう少し高いものと思われます。

なお、過去の調査状況もデータ等で確認できるので、過去の調査において、非協力を貫いていた納税者や、多額の修正申告や更正処分があった納税者については、やはり、調査後の申告状況が注目されています。その後の申告内容が再び低調なものである場合は、数年後に後続年分についての調査が行われることもあります。

納税者の管理は、基本的には税務署で行っており、税務署の職員が選定して調査を行います。例外として資本金1億円以上の法人については国税局の調査部が管理して調査しています。

査察部や料調(資料調査課)の調査対象者

査察部や資料調査課の調査対象者

国税局の査察部や「料調」と呼ばれる各課税部にある資料調査課は、その国税局が管轄する全ての税務署の納税者を調査します。時々、それらの課の調査官・査察官が税務署に来て、調査対象となる者を選定していきます。このとき彼らが作業する部屋は、税務署の職員も一切シャットアウトとなり、誰が調査対象となるのかの情報が漏れないようにしています。

査察は、大口で悪質な脱税者(1億円規模)を専門に調査し、脱税犯として告発する部署ですが、資料調査課も告発はしないものの、悪質な脱税者をターゲットとしている点で同様です。

彼らが動くときはそれなりの情報をつかんでいるはずですので、もし彼らの調査が入った場合には、税理士や場合によっては弁護士とともに、事業や自身に無用なダメージを与えないように、早期に決着するよう適切に対応することが大切です。