税務調査を進めていく過程の中で、時に税務調査官と意見が分かれる「争点」が発生することがあります。
税務調査が長引いてしまう要因の一つが、両者の主張が平行線をたどってしまう争点がある場合です。それぞれの立場からの主張だけを繰り返しても、妥協できるポイントは見つからず、いたずらに税務調査が長引いてしまうだけです。
このような事態にならないためにも、税務調査当日の膠着状態を回避するための注意点についてこの記事では解説していきます。
目次
条件つき譲歩・提案の3つのメリット
条件つき譲歩・提案とは、意見が分かれている争点があれば、ある条件に応じてどのような結果になるかをあらかじめ合意するものです。
たとえば、現時点で契約書がある収入について、貸付金か売上かで意見の相違がある場合、「金銭消費貸借があれば認めてください。もしなければ否認でいいですよ」など、「もし〇〇だったら〜してください」と条件を提示する方法です。
≪条件つき譲歩・提案のメリット≫
①現状のお互いの認識だけで合意することができる
②納税者・税理士・税務調査官のよりよい結果に対するモチベーションになる
③結果に対する「納得感」がある
現場のお互いの認識だけで合意することができる
条件付き譲歩・提案は担当する税務調査官と納税者の間で行う事ができます。
複雑な手続きが不要なため、その場で連続して取り決める事ができ労力の削減に繋がります。 またお互いの主張だけでは終わりの見えない争点にも明確なゴールを決める事ができるので、 結果として税務調査を短時間で終了させることができます。
納税者、税理士、税務調査官のよりよい結果に対するモチベーションになる
条件付き譲歩・提案をすることで納税者、税理士、税務調査官にとって争点に対するゴールが明確になるので、三者がどこに向かって注力すれば、どのように結果に影響するかが把握でき、モチベーション向上に繋がります。
結果に対する「納得感」がある
それぞれの立場からの主張だけを繰り返しても、妥協できるポイントが見つからず、税務調査が長引いてしまいますが、 条件付き譲歩・提案で白黒の線引きを明確にすることで、その結果を納税者だけでなく、税務調査官も納得感を持って受け入れる事ができます。
条件つき譲歩・提案の3つの注意点
交渉が膠着状態になってしまうと、税務調査を長引かせてしまいます。条件を明確にすることで、ある程度のインセンティブを与えて行動のモチベーションを上げる効果があるわけです。前述の例であれば、契約書を探すという具体的な作業をするうちに、物事が進んで行きますので、膠着状態から抜け出すことができます。
ただし、条件付き譲歩を行う際は注意しなければならない点もあります。
前提としてお互いの条件の結果が異なっていること
「あってもなくても、結果は否認」であれば、交渉が成り立ちません。 条件を提示する際は必ず、その条件を満たす事で何らかの譲歩が認められる事になる様、注意しましょう。
条件が明確であること
「もし〇〇なら××」と条件を明確にすることが大切です。「もし〇〇なら××かもしれない」 といったあいまいなものでは成り立ちません。
実際、税理士の立ち会いのない税務調査では、調査官が「この資料を作ってきてください」 などと指示することがあります。たとえば架空の外注先をチェックするため、仕入れ先と、それぞれの仕入れ額のリストアップを命じられるようなケースです。
もちろん、指示された資料は提出しなければいけませんが、その前に税務調査官の目的をきちんと把握して、条件を提示する必要があります。 「仕入れ先はすべてきちんと提示しますから、すべて認めてくださいね」 と、あらかじめ言質を取っておきます。資料を提出した後で、「まあ、それはそれで」などとあいまいにされ、外注先として認められなければ、交渉が進みません。
そのため、何か行動するとき、交渉が膠着している場合には、明確な条件を提示して、約束を取り付けることが大切です。
情報が一方に偏っている場合には、もう一方が不利になる可能性がある
たとえば納税者が契約書があることがわかっていて、「もし契約書があれば是認させてください」と条件を出したとします。税務調査官は契約書があることを知りませんから、出来レースのようになってしまうわけです。
税務調査官は納得できなくなりますので、誠実な対応をしてください。 非誠実な対応を行うと、その事が判明した時に税務調査官は「この納税者はこういう方法を行う人間だ」と思われてしまい、かえって調査の手が厳しくなり時間が掛かるだけでなく、厳しい追求を受ける原因にもなり得ます。
<関連動画はこちら>