通常、税務調査は事前に通知があり、予定された日時に行われますが、通知をせずにいきなり調査に入ることが許されているケースがあります。これが「無予告調査」です。 突然アポなしで税務調査に来られてしまうので、何の準備もできていない経営者はかなり慌ててしまいます。

一般的に、無予告調査は現金での商売をしている個人事業主などが対象となることが多いようですが、必ずしもそうとは限らず企業にも無予告調査が入る可能性はあります。

以前は、対象となる理由がわからないような企業にも無予告調査が入っていましたが、現在は無予告調査の要件が法定化され、悪いことをしている疑いがかなり濃い企業でないかぎり、むやみに行うことは禁止されました。 無予告調査の要件は明確に定められていて、国税通則法第7の10にその旨が記載されています。

この記事では、無予告調査が来た時の6つの対処ポイントについて解説していきます。

経営者と税理士は予め無予告調査に関して打ち合わせておく

経営者と税理士は予め無予告調査に関して打ち合わせておく

税金に関してクリアな状態にしておくのが一番だとはわかっていても、帳簿計算などはいろいろな事情でクリアにしておくことが難しい場合もあると思います。もしもの時のことを考えて、経営者と税理士は無予告調査が入った際の対応についてしっかり打ち合わせをしておきましょう。

税理士とやり取りをする中で、無予告調査についてのアドバイスがない場合は、自分から「もし無予告調査が入ったらどのように対応するべきか」ということを質問し、対処法を聞いておきましょう。

何を言われてもすぐに税理士に連絡を!

何を言われてもすぐに税理士に連絡を!

調査官が訪れたら、まず要件を確認します。税務調査に来たということが確認できたら、すぐに税理士に連絡をしましょう。調査官によっては税理士への連絡をさせないようにうながすことがありますが、「税務代理権限証書」を提出している企業であれば、税理士は税務調査に立ち会うことができる権利を持っています。何を言われても、すぐに税理士に連絡を入れましょう。

可能であれば、突然調査官が訪れても税理士が来るまでは社内に通さないことが望ましいです。 調査官はあの手この手で調査を進めようとしてくるでしょうから、対処に慣れていない経営者だと逆効果の行動をとってしまわないとも限りません。「税理士が来るまでお待ちください」と毅然とした態度を取れるのが理想です。

「今までは大丈夫だった」という言葉は禁句

「今までは大丈夫だった」という言葉は禁句

税務調査でよくあることなのですが、前回の調査では指摘されなかったことが、今回指摘されたというときに、「今まではこれで何も言われなかった」と言いたくなってしまうことがあると思います。しかしこれは絶対に発してはならない言葉。これを言ってしまうと、さらに古い税務記録までさかのぼって修正させられてしまうことになりかねません。「本来は5年の修正でと思っていたけれど、10年分を修正してください」と言われてしまったら、こちらの手間が増えるだけです。

帳簿のコピーや貸与を求められたら

帳簿のコピーや貸与を求められたら

これまでは調査官が帳簿のコピーを求めたり、持ち帰りでの貸与を求めることは法律で許可されていなかったのですが、今は資料のコピーや貸与に関して必要があれば行ってもよいと法律で決められています。このため、求められたら従わなければなりません。

ただコピーについては差し出すことになりますが、貸与については任意になるものの、明確に「何日以内に返却しなければいけない」と法律で決められているわけではないのが問題です。この点においては調査官の権限が広くなったということが言えます。資料の貸与を求められたときは、コピーをとってから貸し出すなどの対処をすることをおすすめします。

無予告調査は断れないが、リスケは可能

無予告調査は断れないが、リスケは可能

無予告調査は法律上拒否することができないと決められています。さらに行われた税務調査において黙秘をしたり、嘘の発言をしたり、偽の資料を提出すると罰則を受ける可能性もありますので、やめましょう。

しかし、平日に突然調査官に押しかけられても、仕事上の大切な打ち合わせや用事がある場合だってありますよね。税務調査を断ることはできませんが「今はどうしても調査に立ち会えないので別の日にしてほしい」とリスケすることは可能です。

調査内容は時系列で細かく記録

調査内容は時系列で細かく記録

無予告調査に関しては、トラブルに発展してしまったケースも中にはあります。調査官は法の範囲で調査を行うのが基本ですが、半ば強引に調査を進め、調査官があらゆるところをひっくり返したことが原因で裁判になった事例も。

調査内容は細かく時系列で記録しておき、トラブルが発生した際に速やかに正しい対処ができるようにしておきましょう。その他、無予告調査に関する元税務署長執筆の記事もあわせて確認いただくとさらに理解も深まり、事前準備や対策がしやすくなると思います。

調査対応の基礎知識 No1:無予告調査

元税務署長が語るリアル 調査対応の基礎知識 No1:無予告調査

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