税務調査官から何を聞かれるのか?このことを知らずに調査当日を迎えることはナンセンスです。
万全な事前準備なくして、事業が成功しないのと同様に、税務調査も当日までの準備力が、結果を左右します。特に、この記事では税務調査官が当日、経営者であるあなたに対して、どんな質問をしてくるのか?なぜ、その質問をしてくるのか?そのポイントについて解説していきます。
当日、慌てずに毅然とした態度で質問に答えられるよう、下準備は入念に、万全の体制で臨みましょう。
目次
税務調査の質問の裏には必ず意図がある
税務調査では、税務調査官が様々な質問をしてきます。なかには雑談のような雰囲気で話を切り出されることもありますが、これらの会話も含めて、すべて税務調査官の意図があって聞いてくるものです。
たとえば、起業の経緯を聞かれることもよくあります。学校を卒業して、どんな職業を経験し、どういうきっかけで独立起業したのかなどです。 「社長は○○大学を卒業されたんですよね?」 「開業されたのは何年ですか?」 など、いかにも雑談のようですが、税務調査官は経営者の人生を知りたいわけではありません。 収入がないと思われる時期の収入源は何だったのか、実はまだ明かしていない収入があるのではないか、などを調べています。
会社や工場など職場の家賃はもちろん、自宅の家賃を聞かれることもあります。 生活水準を推測して、たとえば「生活費が毎月100万円ほどなのに、役員報酬が60万円」であったら、 どこから補てんしているのかを確認するわけです。売上の一部を計上せず、自分の懐に入れて 生活費にあてているのではないか、という見方をしてきます。
安直に話をしてしまうと重箱の隅を突かれかねませんので、注意する必要があるということです。この対策には、リハーサル、つまり予行練習をするのが一番です。
税務調査官16の質問項目と質問意図
税務調査官のインタビュー内容と質問意図は次のようなものです。
・質問1)仕事内容に関する質問と意図
・質問2)創業経緯・起業理由に関する質問と意図
・質問3)開業時期や移転時期に関する質問と意図
・質問4)従業員に関する質問と意図
・質問5)経営者の家族構成に関する質問と意図
・質問6)支払い家賃に関する質問と意図
・質問7)取引先に関する質問と意図
・質問8)請求に関する質問と意図
・質問9)決済手段に関する質問と意図
・質問10)取引銀行に関する質問と意図
・質問11)個人借入に関する質問と意図
・質問12)記帳に関する質問と意図
・質問13)申告状況に関する質問と意図
・質問14)経費・領収書に関する質問と意図
・質問15)給与・役員報酬に関する質問と意図
・質問16)本人確認に関する質問と意図
それぞれ、どのような質問をされるのか。質問の意図はどこにあるのかをチェックしていきましょう。
質問1)仕事内容に関する質問と意図
≪質問≫
どのようなお仕事をされているのですか?どんな商品を扱っているのですか?
≪意図≫
仕事内容以外の収入がないか?をチェックしています。
質問2)創業経緯・起業理由に関する質問と意図
≪質問≫
いつ開業されたんですか?創業のきっかけ、これまでの略歴を教えてください。
≪意図≫
調査の中で、収入がないと思われる時期の収入源は何か?をチェックしています。
質問3)開業時期や移転時期に関する質問と意図
≪質問≫
お店(事務所)を出されたのはいつですか?最初からこの場所で開業をされたんですか?
≪意図≫
他の事業所の売上はないか?をチェックしています。
質問4)従業員に関する質問と意図
≪質問≫
従業員は何名いますか?どのような人達ですか?
≪意図≫
架空の給与がないか?をチェックしています。
質問5)経営者の家族構成に関する質問と意図
≪質問≫
ご家族は何人いらっしゃるんですか?どちらのご出身ですか?どのようなお仕事をされているんですか?
≪意図≫
専従者給与に該当しないか?家族給与に実態があるか?をチェックしています。
質問6)支払い家賃に関する質問と意図
≪質問≫
持家(事務所)なんですか?月々の家賃はいくらくらいですか?
≪意図≫
ローン残高等の経営者の生活費の算出。役員報酬以外の収入がないか?(たとえば売上の一部が経営者の生活費になっていないか?)をチェックしています。
質問7)取引先に関する質問と意図
≪質問≫
メインのお取引先はどちらですか?どんな会社ですか?
≪意図≫
売上、仕入れの計上漏れがないか?をチェックしています。
質問8)請求に関する質問と意図
≪質問≫
お取引先へのご請求は毎月何件くらいありますか?何日締めの何日請求ですか?
≪意図≫
経理処理が発生主義になっているか(現金主義になっていないか)?をチェックしています。
一定の要件を満たす場合を除き、青色申告・白色申告に関係なく発生主義によることが原則となっています。
質問9)決済手段に関する質問と意図
≪質問≫
主な決済方法は何ですか(現金、振込、手形、小切手、その他。相殺有・無)?
現金決済はどのように管理していますか?
≪意図≫
現金決済の場合には架空の可能性はないか?(現金決済の場合には領収書の確認)
相殺取引を純額計上して、消費税・課税売上高が過少になっていないか?(消費税の課税事業者・簡易課税制度の判定等)をチェックしています。
質問10)取引銀行に関する質問と意図
≪質問≫
どちらの銀行とお取引されていますか?
≪意図≫
売上の計上のモレはないか?積立金等の有無は?をチェックしています。
質問11)個人借入に関する質問と意図
≪質問≫
プライベートでローンを組まれているものや、お借入れなどはありますか?
≪意図≫
経営者の生活実態の把握(たとえば売上の一部が経営者の生活費になっていないか?)をチェックしています。
質問12)記帳に関する質問と意図
≪質問≫
帳簿の作成はどなたが行っていますか?作成はPC・紙ですか?会計ソフトは何を使っていますか?
≪意図≫
入力した証票類を誰に確認するのか?会計ソフトに伝票番号はあるのか?などをチェックしています。
質問13)申告状況に関する質問と意図
≪質問≫
申告はどなたが行っていますか?各勘定科目(決算内訳書)はどのように集計していますか?
≪意図≫
隠ぺい仮装や偽りその他不正の行為はないか?をチェックしています。
質問14)経費・領収書に関する質問と意図
≪質問≫
経費に関わる領収書はどのように保管されていますか?
≪意図≫
領収書のないものについて、実態はあるか?(所得税、法人税)、仕入税額控除の否認対象(消費税)はないか?をチェックしています。
(仕入税額控除の適用には領収書や請求書が保存されている必要があります)
質問15)給与・役員報酬に関する質問と意図
≪質問≫
従業員の給与に規定はありますか?支払はどのように管理していますか?役員の方の仕事はどの様な内容ですか?
≪意図≫
架空人件費はないか?役員の過大報酬はないか?をチェックしています。
(役員報酬が適正な部分は損金に算入されますが、過大であると判断された部分については損金に算入されません )
質問16)本人確認に関する質問と意図
≪質問≫
失礼ですが、免許証などの身分証を拝見させていただいてもいいですか?
≪意図≫
他の人が入れ替えで税務調査に対応していないか?をチェックしています。
税務調査官が持っている代表者質問シート
税務調査官は、代表者に関するシートを持っていて、これがマニュアルの役割を果たしています。 上記はそれを模したものです。
このようなシートの欄を埋めることで、聞き漏れのないようにしています。 シートを見るとわかるとおり、聞かれる内容は確定申告書に添付する事業概況書に書かれている内容が多いです。 そのため、経営者の解答と事業概況書の整合性も確認しています。 その意味でも申告書や事業概況書については、経営者本人が確認しておかなければなりません。
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