テレビや雑誌のメディアでよく見かける著名人、有名人による脱税疑惑に関する報道で特に話題になるのが、本来どれくらいの税金を納めなくてはいけなかったのか?追加でどれくらいの金額を納めなくてはならないのか?といった納税額全体の規模感についてでしょう。
そこでよく、「修正申告」、「追徴課税」、「重加算税」など、普段聞きなれない用語が飛び交っているかと思います。本来なら正しく申告しておけば問題なかったものが、税務調査をきっかけに、正しく申告できなかった事実が発覚することで、追徴課税や重加算税と言われるような追加で支払うべき納税額が発生することがあります。
この記事では、加算税にはどんな種類があるのか?について基礎的な解説を行っていきます。
目次
そもそも加算税とは何?加算税の種類を知って、事前対策に生かそう
加算税とは過少申告や無申告、不納付など本来、納税されるべき税額が正しく申告されていない、または納付されていない場合に課される税金の一種です。所謂、ペナルティ税です。
本来納めるべき税額(本税)に加算されるので、キャッシュアウトの総額は本来よりも増加します。
場合によっては納付総額が本税の1.5倍相当まで大きくなることもあり、経営へのインパクトも非常に大きくなります。
税務調査に関わる加算税は主に下記の種類です。
①延滞税
②過少申告加算税
③無申告加算税
④不納付加算税
⑤重加算税
それぞれの税種別の特徴について解説していきます。
延滞税とは?
税金には納付する期限(法定納付期限)が定められています。期限を過ぎて納付した場合に加算されるのが延滞税です。
納付期限から納付が完了するまでの日数を基に計算されますので、当然、納付が遅れる程、税額も大きくなります。
また、期限後申告や修正申告などを行い、税額に不足が生じた場合も延滞税の加算対象となります。
なお、本税が1万円未満の場合は、延滞税の対象となりません。
過少申告加算税とは?
確定申告自体は期日内に完了していたが、税務調査により修正申告が必要となった際に課される税金です。
原則は追加税額の10%ですが、追加税額のうち期限内確定申告額、または50万円のいずれか多い金額を超える部分については15%になります。
事前準備で概算で過少申告加算税を計算する際には、15%で計算しておくとよいでしょう。
なお、税務調査を受ける前に自主申告した場合は5%に軽減されます。
無申告加算税とは?
確定申告が申告期限までに行われていなかった場合に、課される税金です。
災害発生や交通・通信の途絶、新型コロナウイルス感染症対策による個別期限延長など期限後申告の特則が該当するなど、正当な理由がなく、法定申告期限を超過した場合に本税に対して15%の税額が加算されます。
なお、税務調査を受ける前に自主申告した場合は5%に軽減されます。
不納付加算税とは?
給与や報酬など源泉所得税を納期限内に納付しなかった場合に、課される税金です。
本税に対して10%加算されます。
なお、税務調査を受ける前に自主申告した場合は5%に軽減されます。
重加算税とは?
上記の各加算税が課税される場合で、隠ぺいや仮そうがある場合に、課される税金です。
加算税のなかで最もペナルティが重く、税額のインパクトも大きく本税に対して35%もの加算税を支払わなければなりません。
さらに、隠ぺいが認められると、青色申告の取り消し、役員給与の損金不算入などのペナルティがあります。
どのような場合に隠ぺいとされるかについては、国税庁の「法人税の重加算税の取扱いについて
(事務運営指針)」に詳しく解説されています。
どんな場合に隠ぺい仮そうとなるのか?
最も重いペナルティである重加算税の要件となる「隠ぺい仮そう」の考え方について解説していきます。
「隠ぺい仮そう(仮装隠蔽)」とはあるものを隠したり、ないものを捏造したりするという意味です。
法的な考え方では意図的に行う「故意」と意図せず生じた「過失」の2通りが存在します。
当然、故意に隠ぺい仮そうを行った場合には、重いペナルティを覚悟しなければなりませんが、併せて注意が必要なのは過失による隠ぺい仮そうです。
税務調査では故意・過失に関わらず、重加算税の対象となる場合があります。
つまり、納税者が意図して隠ぺい仮そうを行っていないにも関わらず結果として隠ぺい仮そうと同様の結果になっている「形式」上、隠ぺい仮そうに当てはまるケースであってもペナルティが課されるという事です。
そのため、十分に注意をした上で事前準備や自主申告を行う必要があります。
下記では隠ぺい仮装について、故意として判断されるケース、形式(結果)として判断されるケースの代表例を記載しますので、参考にしてください。
故意として判断されるケース・実例
税額を少なくするために帳簿書類をはじめとする決算書類を破棄したり、改ざんする行為、二重帳簿や簿外資産の隠ぺいは故意と判断されます。
また、同族会社に架空の株主名義を設ける等により非同族会社にしている場合なども該当します。
寄付金や交際費の様な損金算入の上限が定められている経費を他の経費に見せかけて経費算入している場合も悪質と捉えられます。
取引先と結託して契約書等を捏造している場合、双方合意の上であれば身から出た錆ではありますが、取引先に反面調査が入る事もあり、重いペナルティに加えて税務調査終了後の関係性悪化など税額以上の経営損失に繋がる可能性もありますので、注意が必要です。
形式として判断されるケース・実例
比較的多いものが隠ぺいの意図がなく二重帳簿を作成しているケースです。たとえば、平日はAの帳簿を、休日はBの帳簿をつけているような場合があったとします。
上記の様な場合、本来、申告する際にはAとBを集計した上で合算額を申告する必要があります。
しかし、Bの帳簿を申告し忘れてしまうと、わざとではなくとも結果として売上の隠ぺいとなり重加算税の対象となります。
また、何らかの理由で売上の一部が経営者や営業担当の個人口座に振り込まれ、集計が漏れるパターンもよくあり、この場合も故意過失に関わらず重加算税を支払うことが多いです。