目次
はじめ

確定申告シーズンが終わり、ひと安心している方がいる一方で、自分の申告内容は本当に正しかったのだろうかと不安を抱えている方も少なくありません。
特に税理士を介さずご自身で申告を行っている場合、税務署からの突然の連絡に怯えてしまうケースが見受けられます。
実は、春先から夏、そして秋以降にかけて、税務調査の動きや傾向には明確な波が存在します。
特に2026年は、国税庁内部の体制変更やシステムの刷新に伴い、税務調査を取り巻く環境が歴史的な転換期を迎えています。
年間130件以上の税務調査に立ち会う現場の知見をもとに、2026年夏の最新トレンドと、今後急速に厳しくなる税務調査への具体的な対策について解説します。
今回と同じ内容をYou tube動画にもアップしております。こちらも併せてご視聴ください。
現在すでに税務署から連絡があり、「どう対応すればいいかわからない」「申告漏れを指摘されそうで不安だ」
という方は、一人で抱え込まず、すぐにご相談ください。

春先に急増するお尋ねと直近の調査動向
確定申告直後の春時期には、本格的な実地調査ではなく「お尋ね」と呼ばれる電話や書面での問い合わせが多く発生します。
現在はAI OCRなどの技術導入やデータの電子化が進んでいるため、申告データ上のあからさまな不備や矛盾は一瞬で抽出されます。
例えば、2年前の売上が1,000万円を超えているにもかかわらず消費税の申告を出していないケースや、不動産および車両等の譲渡所得における添付書類の漏れ、住宅ローン控除の適用ミスなどが典型例です。
これらは本格的な調査というよりも、うっかり忘れや計算ミスを補正させるための確認作業として行われます。
一方、2026年春から初夏にかけての本格的な税務調査の着手時期は、例年よりやや遅い傾向が見られました。その背景には、全国の税務署で進められているバックオフィス業務の集約化が関係しています。
バックオフィス「センター集中化」がもたらす影響
国税庁では2019年より、複数の税務署における内部事務やデータ入力、各種処理を1箇所に集約するセンター化を段階的に進めてきました。
この移行プロセスが2026年6月までに完了し、7月から完全運用へと移行しています。
この体制移行の直前期は現場の事務負担が極めて高くなるため、税務署側は複雑で時間のかかる案件を避け、比較的短時間で完了する簡易な案件を優先して処理する傾向がありました。
給与所得の多い人物が事業の実態がないにもかかわらず多額の経費を計上して源泉所得税の還付を受ける副業節税スキームの摘発や、年商300万円以下で帳簿を備え付けていない者への簡易調査、さらには手計算によるミスや無税理士案件など、手間をかけずに件数を稼げる対象が狙われやすい環境にあったと言えます。
夏以降に襲来する「嵐の前の静けさ」と本格化する調査

体制移行期の一時的な停滞は、いわば嵐の前の静けさに過ぎません。
2026年7月以降、センター集中化の完了によって現場の調査官は事務作業から解放され、純粋な実地調査に注力できる環境が整いました。
さらに、秋口に向けてKSK2をはじめとする新システムの本格運用が開始されます。
これにより、調査官1人あたりが担当する実地調査の件数が格段に増えるため、これまで人手不足を理由に見過ごされていた層まで網の目が広がることになります。
あわせてAI分析による高精度な対象選定が行われ、前年比で売上や利益率が極端に変動した基準の捕捉だけでなく、法人と経営者個人、さらには取引先を含めた横の繋がりがデータとして紐付けられます。その結果、反面調査や関連会社を含めた大規模な一斉調査が従来以上に容易になります。
夏の税務調査に向けて気を付けるべき具体的な対策

網の目が一層細かくなるこれからの時期、予期せぬペナルティを防ぐために意識すべき具体的な対策は大きく分けて3つあります。
1点目は、税務署から連絡が来る前、あるいは臨場前の「自主申告」です。
過去の申告に不備がある場合、調査官が来る前に自発的に修正申告や期限後申告を行うことで、過少申告加算税や無申告加算税が免除または大幅に軽減されます。
仮に税務署から調査の電話が入った後であっても、実際の調査官と対面して具体的指摘を受ける前であれば自主申告として扱われる余地が残されているため、諦めずに対応することが重要です。
2点目は、「事業関連性の明確化」と「客観的な証拠の保存」です。
個人事業主や経営者が最も指摘を受けやすいのが、プライベートな費用(家事費)の混入です。
経費として認めてもらうためには、その支出が事業の売上にどう直結しているのかを論理的に説明できなければなりません。
また、「ボツになったから捨てた」という言い分は通用しないため、撮影データや試作品の写真など、仕事で使用した物的証拠は必ず残しておく必要があります。
3点目は、税理士の「署名(関与)」を活用した調査リスクの低減です。
ご自身で申告し直すよりも、税理士に依頼して適正な金額で修正申告を行い、「税理士が確認して作成した」という証明(署名)を添えて提出することで、その後に改めて実地調査へ発展する確率を大幅に下げることができます。
おわり
2026年夏の税務調査は、内部事務のセンター化とAIを駆使した新システムの導入により、過去に類を見ないほど効率的かつ精密に行われるフェーズへ突入しています。
「今まで大丈夫だったから」という過去の経験則は、これからの税務行政には通用しません。
少しでも申告内容に不安がある方や、過去の経費計上に心当たりがある方は、税務署からの連絡を待つのではなく、早い段階で適正な申告手続きを進めることが、資産と事業を守るための最善策となります。

