さて、調査の事前通知がありました。
どのように調査に対応したらよいのでしょうか。
まず、その前に、事前通知に対しどのように応答するのかということと、調査日前に準備しておくことについて考えてみましょう。

事前通知への対応

事前通知への対応

日時、場所

事前通知では、調査の日時、場所や税目などを通知することとされています(国税通則法74条の9、通則法施行令30条の4)。
法律では、事前通知を調査の何日前までにしなければならないかまでは規定していませんが、一定の余裕時間をおいて調査日が通知されます。

日時や場所については、「〇〇日の〇〇時に、事務所へお伺いしたいのですが、いかがでしょうか?」などと通知されます。
課税庁は、調査の日時、場所に係る通知について、納税者から「合理的な理由」を付してその内容の変更の求めがあった場合は、「当該事項について協議するよう努めるものとする」とされています(国税通則法74条の9第2項)。
どのような理由が「合理的な理由」に相当するかは、はっきりと示されているわけではないので、納税者の事情と調査の必要性との衡量において、税務職員の合理的な裁量により判断されることとなります。
納税者としては、「その日は〇〇の予定があるので、〇日であれば、一日対応することができる。」などと、指定された日に不都合がある理由を伝えましょう。

実際には、結局は任意調査という制約もあり、納税者が都合が悪いと言っている日では、調査への協力や進展が望めないので、課税庁の都合の良い日はこの日ですが、どうですか?(ほかの日が良いですか?)といったようなニュアンスでの通知がほとんどだと思われます。
予定をよく確認したいので折り返し連絡する、と言って、通知時に即答しなかったとしても、また、税理士との日程調整が必要なので、折り返し、税理士から連絡させるという返答でも、何度も先延ばしにするのでなければ問題はないでしょう。

その他の通知事項

通知事項には、「調査の目的」もあります。
これについては、「申告されている〇〇税の確認です。」程度の通知しかなく、それでも合法と解されています。「何か、間違っているのですか?」と聞いても、調査理由の説明は必要とされていないというのが判例なので、「正しいかどうかの確認のためです。」というような返答しか望めないと思ってください。

調査の対象税目、期間、帳簿書類等についても通知があります。調査の過程で、通知した期間や税目等以外にも誤りがあると見込まれたときは、対象期間、税目等を広げることが許されています。この場合、通知はありますが、事前通知はありません(国税通則法74条の9第4項)。
その他、調査担当者の名前や所属部署等が通知されますので、その後の連絡が確実に取れるように、しっかりメモすることも大切です。

事前準備

事前準備

申告資料と事務所の確認

事前通知の日から、短ければ1週間後を調査の実施日として通知されることもあります。課税庁は、調査日の変更を求められれば協議するよう努めるとされているので(上記参照)、必要に応じて、理由を付して申し出ましょう。
調査日までに、以下の点について準備、確認しておけば、調査においてされるであろう提示要求や質問に、てきぱきと提示、返答できるのではないでしょうか。

・調査対象期間の帳簿や請求書、領収書、通帳他、取引関係資料が揃っているかの確認
・帳簿記載に間違いがないのかの確認(期末処理など)
・イレギュラーな取引の内容の確認
・借入、返済、貯蓄状況の確認
・一定の金額以上の支出内容の確認
・減価償却資産の確認
・外注費の内容の確認
・従業員の採用・解雇と給与簿、源泉徴収等の確認
・事務所内、工場内、机の中、金庫の中、棚等の整理整頓 など

申告額に間違いがあった場合

事前準備の段階で、もし、申告納税額に間違いが見つかった場合は、その部分について修正申告を直ちに行うことも、納める税金を少しでも減少させる点で効果的です。
調査において指摘を受けて修正申告をした場合は、過少申告加算税が増加税額の10%の割合で賦課決定されるところ(もうちょっと複雑ですが簡略化します。以下同じ。)、調査の開始前に自主修正を行った場合は、過少申告加算税は5%の割合で計算することとされていますので(通則法65条1項)、過少申告加算税について少額で済むことになります。
なお、取引について仮想・隠ぺいなどの事実があり、調査により重加算税相当(加算税は35%の割合)と認定されるような場合においても、調査が始まる前に自主的に修正申告を行うことで、上記と同様に過少申告加算税の割合が5%となるので、積極的に自主修正を行うことを検討すべきです。
ただし、事前通知時に、その間違っていた部分やそれに関連する事項について調査しますと告げられた場合には、調査開始前にその間違っていた部分について修正しても、更正があることを予知して行った修正申告であるとして、加算税は5%とはなりません(通則法65条1項)。
したがって、事前通知の内容については、よく聞き取ってメモしておきましょう。