今回の記事では、税務調査終了後に調査結果説明の内容に納得がいかず、修正申告や期限後申告の提出に応じなかった場合に届く更正処分等の通知や、下った処分に対して行う不服申し立ての対応について解説していきます。

税務調査後の更正処分等の通知

更正処分等の通知

税務調査の終了時に、調査担当者から調査結果説明が行われますが、その内容や結論に納得がいかず、修正申告あるいは期限後申告の提出の慫慂に対して、応じないと返答した場合は、調査担当者は更正又は決定処分を行う手続きに入ります。

調査報告書を作り、更正又は決定の理由文案を作り、上司の決裁を受け、更正又は決定通知書を、原則として郵送により通知します。
そのような手続きを経るので、調査結果説明から通知までは1月前後は掛かることとなります。

課税庁が更正等をすることができる期限が迫っている場合などは、差置送達や交付送達(税務署の職員が納税者の住居等の敷地内に通知文書を差し置いて届けたり、直接手渡しで送達する手続。)が行われる場合もあります。
このような場合や郵便局の配達員に対し、受取りを拒否して通知書が税務署に返戻されたとしても、あるいは、配達によりポストに届いていることを実際に知らなかったとしても、差置送達があった時点で、あるいは、郵便が配達された時点で、通知は適法になされたというのが判例になっています(昭和54.6.18最高裁第2小法廷判決等)。

また、通知に記載されていた氏名の表記が、例えば「髙橋和夫」が「高橋和男」となっていたような場合でも、対象者が合理的に特定できるのであれば、通知が直ちに無効といえるわけではないと考えられます。

税務調査後の不服申立ての検討

不服申立ての検討

行政庁の行った処分に対しては、不服申立てをすることができます。
国税に関する更正又は決定処分に対しては、再調査の請求あるいは審査請求のいずれかの申立てをすることができます。
これらの申立てを行う場合は、いずれも通知があった日から3カ月以内に行わなければならないので、通知があったら、速やかに、行うのか行わないのか、どちらの請求を行うかの判断をする必要があります。
不服申立てをして、判断が覆る可能性があるのか否かの見極めや、どちらの請求をするのかの判断は、やはり税務調査専門の税理士に相談した方が良いでしょう。

不服申立ての選択肢の違い

不服申立ての選択肢の違い

不服申立ての申立先

不服申立ては、上記のとおり、再調査の請求あるいは審査請求のいずれかから選択します。それらの大きな違いは、再調査の請求は、処分を行った税務署長等に対し行い、審査請求は、国税不服審判所という国税に関する処分に対する不服申立てを専門に処理している第三者的機関に対して行うということです。
再調査の請求は、文字通り、当該税務署においてもう一度調査内容を確認し、当該税務署が適否を判断するというものであることに対し、審査請求は、処分をした税務署とは別の機関において適否の判断を行うことになります。
なお、法解釈については、税務署は署内や国税局で検討をしてから処分を決定しているので、再調査の請求で争っても、その解釈を改める可能性は殆どないものと思われます。法解釈について争うならば、審査請求まで争わないと、判断が変更されることは難しいということになります。

判断までの期間

再調査の請求に対しては、3カ月を目安に判断がされますが、審査請求は、一から双方の主張や事実関係を確認することとなるので、裁決まで1年ほどの期間が費やされることになります。

納税者が行う対応

再調査の請求は、簡易な手続きにより見直しを行うという趣旨の制度です。
納税者自身が対応することも、それほど困難ではありませんが、課税庁の処分の間違いを主張し立証することに努めなければ、その判断を覆すことは難しいでしょう。
判断するまでの期間も限られているので、再調査の担当者と数回面談をする程度で終了することが通常です。
これに対し、審査請求は、簡易な裁判を行うと考えた方が良いでしょう。
課税庁も証拠や主張書面を担当審判官に提出しなければならず、請求人である納税者も同様です。また、双方、相手の提出した書面はもちろん、証拠についても閲覧をすることができます(証人尋問はありません。)。
主張のやり取りは書面で行われます。もちろん納税者自身で対応していくことも可能ですが、課税庁の提出した主張や証拠に対し、しっかりと、学説や判例などを引用し、証拠に基づき反論するなどしなければ、有効な反論にはなりません。
担当審判官を説得し、課税庁の処分が誤りだという確信を持ってもらうように、少しでもその可能性を広げるためには、不服申立ての経験を持つ税理士に対応を任せることが必要です。