はじめ

前回の「税務調査の基礎知識 No.5:調査の事前準備」では、税務調査をスムーズかつ適切に乗り切るための基本的な準備事項について解説しました。

しっかりと事前準備を整えておくことは重要ですが、実際に調査が始まった後の対応や、申告内容そのものの性質によっても課される税金のペナルティは大きく変化します。

今回は、売上や所得の一部だけを抜き出して極端に少なく申告する、いわゆる「つまみ申告」を行った事案において、隠蔽や仮装を行った時期が確定申告の後であった場合にも重加算税が賦課されるのかについて解説します。

国税通則法第68条第1項では、納税者が課税標準や税額の計算の基礎となる事実の全部または一部を隠蔽・仮装し、その隠蔽・仮装に基づいた納税申告書を提出していた場合に重加算税を課すと規定されています。

この条文を素直に読むと、確定申告より前に隠蔽・仮装が行われていることが重加算税賦課の要件であると解釈でき、学説における通説もそのような立場をとっています。

しかし現実の税務調査の現場では、申告時には取引資料とは異なる額で申告しておき、調査が入ると知ってから慌てて証拠の隠蔽や破棄、改ざんなどの工作を行うケースも少なくありません。

さらに、帳簿の改ざんや資料破棄が行われた正確な日時や動機を税務署側が客観的証拠で証明することは非常に困難であり、納税者の自白に頼らざるを得ないという問題があります。

このように隠蔽・仮装行為が申告期限前に行われたと証明できない場合、条文どおり厳格に解釈すると重加算税は賦課できないことになります。

この問題に対する実務上の大きな判断指針となるのが、つまみ申告に対する重加算税の賦課を適法とした最高裁平成6年11月22日判決です。

これまで住民税という「地雷」の上に座っていた貴方が、それを清算し、社会に対して「私は正当な納税者である」と宣言した時、貴方の人生にはこれまでとは全く異なる景色が広がります。

現在すでに税務署から連絡があり、「どう対応すればいいかわからない」「申告漏れを指摘されそうで不安だ」
という方は、一人で抱え込まず、すぐにご相談ください。

1. 事件の概要

今回話題となった方は、本当は収入や支出を正しく記録したノートを作っていたにもかかわらず、確定申告のときにはそれを完全に無視して、実際とはかけ離れたごくわずかな金額だけを申告し続けていました。

つまり、知識がなくて間違えてしまったのではなく、本当の金額を知っていながらわざと何年も嘘の申告を繰り返していたというケースです。

その後、税務署や査察の調査が入ると、真実よりも過少な店舗数や利息収入のメモを提出しました。

少額ずつの修正申告を数回繰り返した末、最終的には巨額の所得漏れを認める修正申告を行い、査察から検察官へ告発されました。

納税者側は、申告前に隠蔽や仮装の工作をしたわけではなく単なる過少申告にすぎないと主張し、重加算税の取消しを求めて提訴しました。

裁判の経過として、第一審の地方裁判所は重加算税を適法と認めましたが、第二審の高等裁判所は違法と判断し、最終的に最高裁判所が再び適法とする判決を下しました。

2. 判決の要旨

最高裁判所は、本当の利益が分かっている帳簿を作っていながら、長年にわたって嘘の少ない金額で申告し続け、税務調査が入った際にもニセの資料を出してまで隠し通そうとした悪質な行為を重く見て判断しました。

つまり、知識不足によるうっかりミスではなく、税金を逃れようと嘘を重ねて事実を隠し続けたことこそが、最も重いペナルティの対象になると結論付けたのです。

そのうえで、単に真実より少ない額であることを認識しながら提出したというにとどまらず、確定申告の時点において真実の所得を隠蔽しようという確定的な意図のもと、必要に応じて事後的にも隠蔽の具体的工作を行うことを予定しました。

その結果過少申告書を提出したことが明らかであると判示しました。

したがって、本件の申告行為は単なる過少申告ではなく、国税通則法第68条第1項に定める事実の隠蔽とそれに基づく申告に該当すると結論付けています。

3. 判決の検討と実務への影響

この判決は事例判断とされていますが、課税庁側にとっては、申告時に直接的な隠蔽・仮装を行っていない殊更過少なつまみ申告に対しても重加算税の賦課が適法と認められた重要な根拠となっています。

ただし注意したいのは、通常より重いペナルティが科されるのは、最初から税金を隠すつもりで申告し、後から証拠を隠す工作まで計画していたような悪質なケースに限られるという点です。

そのため、知識不足によるうっかりミスや計算間違い程度で、いきなり重い罰を受けることはありません。

正しく知って準備しておけば税務調査は決して怖いものではありませんので、まずはプライベートと仕事のお金を分け、領収書にメモを残すことから落ち着いて始めてみましょう。

本件では、調査の段階で虚偽の店舗数や売上げのメモを提出し、意図的に過少な修正申告を繰り返した行為がこの条件に該当すると判断されました。

したがって税務調査において、虚偽答弁や嘘の資料提出、取引先との口裏合わせ、帳簿書類の隠滅や正当な理由のない不協力といった事実が立証されたとします。

この場合、課税庁は事後の工作予定があったと判断します。

その結果、重加算税が賦課されることになります。

まとめ

最高裁判所は、最初から隠すつもりがなかったとしても、申告があまりに不自然で、調査が入った後に嘘をついたり証拠を隠そうとした場合は「最初からごまかす意図があった」とみなされて重い罰が科されると判断しています。

つまり、うっかりミスで間違えてしまったとしても、調査で慌てて嘘を重ねてしまうことが一番のリスクになるため、間違いに気づいても正直に事実を伝えることが何より大切です。

税務調査を受けた際、本税の追加納付自体を避けることが難しいケースであっても、不要な重加算税という重いペナルティまで課される事態を回避するためには、事実を隠さず、虚偽の言動をとらずに誠実に対応することが何よりも重要です。

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