はじめに

さて、いよいよ税務調査シーズンが本格的に始まろうとしています。

うちは事業の規模が小さいから関係ない」「周りのみんなも適当にやっているから大丈夫」と高を括っている方もいるかもしれませんが、それは非常に危険な思い込みです。

税務署はランダムに調査先を選んでいるわけではありません。

独自のシステムや蓄積されたデータに基づいて、確実に成果を出せる、つまり申告漏れが見込める先を正確に絞り込んでいます。

今回は、AIが国税庁の公開データなどを分析して弾き出した「申告漏れなどの不正発覚割合が高い業種ランキング」をベースに、プロの税理士目線からその背景にあるリアルな実態と、今後さらにマークされるであろう注目業種の予測を分かりやすく解説していきます。

この記事はこちらの動画をもとに読みやすくしております。

AI分析で判明した不正発覚割合が高い業種ランキングTOP5

第5位:美容業(美容室・エステなど)

AIのデータによると、美容業の不正発覚割合は30.8%となっています。

コロナ禍が完全に明けて以降、特に40代から50代の方々の間で美容への意識が急激に高まっており、それに伴って売上を大きく伸ばしている個人サロンやエステ店が目立つようになりました。

最近の大きな特徴として、SNSを上手に活用してファンを増やし、短期間で爆発的に稼げるようになったものの、税金の知識がないために無申告のまま放置してしまっているケースが挙げられます。

また、よくあるパターンとして、売上が1,000万円を超えそうになると「消費税の課税事業者になりたくない」という理由から、意図的に売上を900万円台で止めるような調整をしてしまう方がいます。

こうしたグレーな動きをしている個人事業主は、国税当局のシステム上で非常に目立ちやすいため、いきなり税務調査のターゲットになる可能性が極めて高いと言えます。

第4位:土木工事業・建築業

建築・土木業界は、毎年必ずと言っていいほど税務調査のターゲットになる鉄板の業種です。

国税庁が発表するワーストランキングでも、ベスト5やベスト10から外れることはまずありません。

この業界で特に狙われやすいのは、いわゆる「1人親方」として活動している方々です。

日々の現場作業があまりにも忙しすぎるため、経理の処理がどうしても後回しになり、確定申告の直前になってから慌てて適当な数字を書類に書き込んで提出してしまうケースが後を絶ちません。

中には、不適切な処理をアドバイスするような業界の相談窓口に頼ってしまい、結果的に手抜きな申告書を作られていることもあります。

もしこれまでに一度も税務調査が入ったことがないという事業者であれば、今年は我が家に調査官がやってくるという強い危機感を持って、今から帳簿を整理しておくべきです。

第3位:外国料理店(中国料理など)

飲食店の中でも、特に中国料理をはじめとする外国料理店において38.8%という高い水準で不正が発覚しています。

こうした店舗では、レジのキャッシュドロアを開けっ放しにして会計をしていたり、お客様に渡す手書きの領収書を複写にせず、1枚きりで発行していたりするなど、現金の管理方法がずさんなケースが散見されます。

ここで覚えておいていただきたいのは、税務調査官は調査を行う前に、必ず一般客を装って店舗へ「下見(内偵調査)」に来ているということです。何人で来店し、どれだけの客席が埋まっていて、レジがどのように扱われているかをプロの目で細かくチェックしています。

そのため、売上を抜いてどんぶり勘定で申告しているような行為は、実際の調査の段階で確実に看破されてしまいます。

第2位:その他の飲食業(居酒屋・焼き鳥屋など)

大手チェーン店よりも、個人経営の居酒屋や焼き鳥屋といった「現金商売」が中心の店舗が定番のターゲットとして狙われています。

これは、夜間の遅い営業時間帯の売上や、大人数の団体客から受け取った現金の会計を、意図的に売上から除外する不正が今も昔も多いためです。

特に焼き鳥屋に関しては、食材の原価率が比較的低く、内装に大きなお金をかけなくてもアジのある雰囲気として繁盛させやすいため、手元に利益が残りやすいというビジネス特有の性質があります。

それにもかかわらず、経営者の経理に対するリテラシーが低く、日々の処理の手が回っていないことが多いため、調査官からすれば「入れば高確率でミスや不正が見つかる」格好の標的になってしまうのです。

第1位:バー・クラブ(キャバクラなど)

調査が入った法人の59.0%、つまり約6割という驚異的な確率で不正が見つかっている圧倒的なワースト1位が、この夜の街のビジネスです。

近年は、SNSのフォロワー数が何十万人もいるようなインフルエンサーのキャバ嬢が登場し、アイドル的な人気を集めることで、特定の個人が莫大な金額を稼ぎ出すケースが増えています。当然、そうしたスターキャストを抱える店舗はそれだけで世間の注目を集めるため、国税当局のマークも一段と厳しくなります。

また、キャスト個人としても確定申告が必要になりますが、衣装代や美容代として認められる経費には法律上の限界があります。最近では申告漏れの指摘だけでなく、いわゆるパパ活によって男性から受け取った資金への「贈与税の無申告」がニュースになるケースも急増しています。

プロ税理士が予測する「今後さらに危ない業種」

ここまではAIが分析した過去のデータに基づくランキングでしたが、ここからは現役の税理士としての私の肌感覚から、今後さらに税務調査が厳しくなると予測される注目分野を解説します。

まず、確実に狙われるのがインバウンドの急回復に沸く「観光業や民泊ビジネス」です。

かつては思うように利益が出なかった民泊事業者でも、最近は円安の影響もあって大繁盛し、急激に売上を伸ばしているケースが目立ちます。

「これまでは赤字だったから少しくらい大丈夫だろう」と油断し、急に増えた儲けを隠して申告しないでいると、高確率で税務署に目を付けられることになります。

次に警戒すべきは、女性のリスキリングや経営支援を謳う「助成金・補助金絡みのコンサルタント」です。

残念なことに、こうした国の支援金獲得の裏側で、不正なキックバックを提案して暴利を貪るグレーなコンサルタントグループが紛れ込んでいます。こうした詐欺的なグループに税務調査のメスが入ると、国税は一味が持っている顧客リストを押さえます。

そこから一網打尽に連鎖調査が行われるため、知らずに巻き添えを食らって巨額の追徴課税を受ける経営者が今後増えていくと予想されます。

最後に見落とせないのが、数年前のコロナ禍におけるペットブームで大きく稼いだ「ペット関連ビジネス(ブリーダーやトリミングサロン)」です。

税務調査というのは、利益がドカンと出たリアルタイムの時期ではなく、そこから3年から5年ほどあえて時間を空け、泳がせてから入るのが鉄則です。

過去に遡って多額の税金と重いペナルティを一気に徴収する方が、税務署としても効率が良いからです。ブームからちょうど良い年数が経過した今秋あたりから、こうした個人ブリーダーへの本格的な調査が始まると見ています。

おわりに

日本の税務統計において、個人の事業主に対して税務調査が行われる確率は全体の1%以下と言われています。

しかし、この数字を見て「なんだ、自分には関係ない確率だ」と安心しないでください。

もしあなたの身の回りで「税務調査が入った」という人が1人でもいるならば、その地域や業種、あるいは取引先の繋がりから、次はあなたの元に調査官がやってきてもおかしくない状態にあると言えます。

税務調査の対象を選ぶ最終的な決定権は、現場の税務署の調査官にあります。

もしも過去の確定申告の内容に少しでも後ろめたい心当たりがあったり、忙しさにかまけて何年も無申告のまま放置してしまったりしているという方は、税務署から突然の電話や手紙が届く前に、自発的に専門家へ相談し、「自主申告(修正申告)」を行うことを強くおすすめします。

税務署に指摘される前に自ら進んで動くことで、ペナルティとして課される罰則的な税金を大幅に軽減することが法律上可能になるからです。

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