目次
はじめに

所得税の申告義務は給与だけでなく、さまざまな経済的利益にも関係してきます。特に外貨を保有・活用している方は、為替差益が申告対象になるケースも少なくありません。
この記事では、申告義務のあるケースや、経済的利益への課税、そして為替差益が発生する具体的な事例について解説します。正しい知識を身につけ、申告漏れを防ぎましょう。
この記事を読むことで、自分の取引が申告対象にあたるのか、注意すべきポイントがどこにあるのかがわかり、実務で迷うことが少なくなります。

1 申告が必要な者

日本に住むサラリーマンで、確定申告書の提出義務がある者については、いろいろなケースがありますが、代表的なものは以下の通りです。
① 給与の収入金額が2,000万円を超える者
② 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える者
③ 同族会社の役員やその親族などで、その同族会社からの給与のほかに、貸付金の利子、店舗・工場などの賃貸料、機械・器具の使用料などの支払を受ける者
一般的なサラリーマンは、副業の利益が20万円を超えると、上記②のケースに該当し、申告が必要になります。
2 経済的利益への課税

商品を販売したり、役務を提供して対価を受け取っていれば、所得金額を認識することは難しくありません。
しかし、所得税法が課税対象とする所得は、包括的所得概念により、原則としてその範囲に制限がありません。
そのため、経済的利益にも課税されます(所法36①)。
知識が不足していると、申告すべき所得の申告漏れにつながります。
例えば、ふるさと納税の返礼品も経済的利益に該当します。
評価益は、利益が実現したときに課税されます。
資産保有中は課税対象ではなく、譲渡などによって利益が確定した場合に課税される点が重要です。
会社員については、会社から受ける経済的利益(会食・旅行費用など)も原則給与として課税対象ですが、一定の要件を満たせば非課税扱いとなる場合があります(所基通36-30ほか)。
3 為替差益

外貨の保有によって発生する為替差益は、保有しているだけでは課税されません。
しかし、外貨を利用した取引により評価益が実現すると、課税対象となります(所法57の3①)。
⑴ 外貨預金の払出し
外貨預金を円に換金した場合
⇒ 為替差益は雑所得として課税
⑵ 外貨預金から外貨預金への預け替え
同一外貨の預け替えは、課税関係は生じない。
⑶ 外貨預金を払い出して不動産を購入
外貨預金で不動産を購入した場合
⇒ 為替差益は雑所得として課税
⑷ 外貨預金で金融資産を購入
外貨建MMFなどの金融資産を購入した場合
⇒ 為替差益は雑所得として課税
⑸ 外貨預金を異なる通貨に換金

例えばドル預金をユーロ預金に換金した場合
⇒ 為替差益は雑所得として課税
⑹ ドル建て海外不動産の売却と預金
海外不動産の売却によりドルで受け取った代金は、為替差益が譲渡所得の中に含まれる形で課税されます(H22.6.28裁決事例集№79)。
おわりに

為替差益や経済的利益は、知らずに課税対象となってしまうことが多いため、外貨取引や副業を行っている方は、申告義務や課税ルールをしっかり理解しておくことが重要です。
特に、外貨を保有しているだけでは課税されない場合と、取引などによって評価益が実現した場合に課税されるケースの違いは押さえておきたいポイントです。
今回の記事でご紹介したように、日常的に行う外貨預金の換金や不動産・金融資産の購入、売却といった場面でも為替差益は発生する可能性があります。
思わぬ申告漏れが原因で後日指摘されることを避けるためにも、自分の取引が課税対象になるのか事前に確認する習慣を持つことが大切です。
また、制度は細かく変更されることもありますし、ケースによって判断が分かれる場面もあります。
判断に迷う場合や、不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談することで安心して正しい申告が行えます。
副業を行っている方はこちらの動画でも詳しく解説しております。
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