はじめに

「税務調査でどんなことを聞かれるのか?」これは、初めて調査を受ける経営者や経理担当者にとって最大の関心事の一つです。

実際、税務署の調査官が何をチェックし、どのような視点で質問をしてくるのかを事前に知っておくことで、当日の対応に大きな差が生まれます。

本記事では、税務調査の現場でよく聞かれる質問や、重点的にチェックされやすいポイントを実例を交えて解説します。

「調査官は何を見ているのか?」「どこを突っ込まれるのか?」を事前に理解しておけば、調査当日も慌てることなくスムーズに対応できるでしょう。ぜひ、最後までお読みいただき、準備の参考にしてください。

現在すでに税務署から連絡があり、「どう対応すればいいかわからない」「申告漏れを指摘されそうで不安だ」
という方は、一人で抱え込まず、すぐにご相談ください。

会社の業務を把握するための質問から始まる

税務調査が始まっても、いきなり帳簿をひっくり返して税務署がチェックを始めるようなことは基本的にはありません。

担当する調査官によっても違いますが、最初は雑談等を交えながら業界や会社の状況などの質問がされます。

そして組織構成や従業員数など、会社情報的なことから受注から納品、入金までの流れなど、次第に業務全体を把握する内容の質問に移っていきます。

特に売上に関しては締め日や入金日、売上計上のタイミングなど、少し突っ込んだ内容のことを聞かれると考えておくと良いでしょう。

また、小売業など在庫を抱える事業を行っている会社では、仕入れに関する質問もされます。その他、給料の締め・支払日や支払い方法、場合によっては社長の趣味などを聞かれる場合もあります。

税務調査とは無関係と思われるようなことを聞かれることもありますが、実は大きな意味を持っていたりするので注意が必要です。

税務調査でチェックされる重点ポイント

会社の概況を確認した後、税務調査1日目の午後になると帳簿確認作業が始まります。
重点的にチェックされるポイントは以下のような項目です。

売上計上時期のずれ

税務上、売上計上のタイミングは発生主義が基本となるため、商品の納品日やサービス提供日になります。

これを現金主義で計上してしまい、入金日に売上計上しているとずれることになります。

期をまたがって計上時期がずれていれば売上計上漏れを指摘されることになります。

交際費

交際費の私的利用がないかをチェックされます。

例えばゴルフ代や食事代を交際費として計上している場合は、誰と行ったかなど詳細に聞かれます。

社長の趣味などを最初に質問するのは、グレーな交際費を明らかにするために意味があるのです。

参加者や人数があいまいな飲み屋の領収書も、あまりにも高額だと目につくことがあります。

在庫金額

小売業などの在庫商売では必ずチェックされます。

会社が作成する在庫表の数字の増減だけで利益を操作できてしまうので、しつこく質問されます。

在庫計上漏れがある場合は追、徴課税されることになりますので要注意です。

人件費

架空の人件費を計上して、利益を減らす行為がされていないかをチェックします。

疑わしい場合は履歴書やタイムカードがあるか、社会保険加入があるかなどを確認されます。

アルバイトで現金払いになっている場合などは突っ込まれて質問されることになります。

その他

国税で聞かれることは、過去に悪さをしてきた人たちの手法だったりするわけですが、この他、外注費の水増しや関係会社との取引内容など、不正行為が発生しやすい箇所は重点的にチェックされ、不明瞭な場合は質問されます。

曖昧でしどろもどろな答えをしていると、脱税を疑われることになります。

税務調査の前に顧問税理士や税務調査専門税理士と相談してシミュレーションをしておくことをおすすめします。

調査官からの質問に答えられるようにしておく

売り上げの計上時期のずれ

税務調査当日は調査官が様々な点に着目して調査。いろんな質問を受けることになります。

一番多く聞かれるのは「売り上げの計上時期のずれ」。

本来、計上しておかなければいけなかった売り上げを間違って翌期に計上していないかどうかなどをチェックしています。

交際費の個人経費

また「交際費の個人経費」があるか確認するための質問も多いようです。

特に交際費はグレーな経費が入りやすい項目。

親戚の結婚祝や贈答品という項目の自分用の物、取引先と行ったことにした家族旅行や使途秘匿金などを入れていた場合には要注意です。

在庫計上漏れ

「在庫計上漏れ」も調査官がよく確認する項目。

期末の在庫を減らせばその分利益が減るため、税金が少なくなります。

さらに会社がつくった在庫表から計算するので、間違いやすい項目。そのため調査官もかなり念入りに調べます。

架空人件費

「架空人件費」についても疑われないように注意が必要。

飲食業や訪問介護、テレアポ営業や外国人労働者を多く雇用する会社など、人を多く使う事業者のなかには架空人件費で利益を減らそうとする事業者もいます。

給料として支払ったことにして自分のお金にしたり、会計上だけ水増しして実際には支払わなかったり。

そのため、特に給料を現金で渡していたり、履歴書を保存していなかったりすると疑われることがあります。

売り上げの計上漏れ

飲食店の税務調査などで多いのは「売り上げの計上漏れ」。

調査方法は多岐にわたります。

例えば、調査官が事前に客のふりをして実際に飲食してレシートをとっておき、本当に売り上げが上がっているかどうか確認することもあるようです。

調査官から質問されてもしっかりと答えられるようにしておきましょう。

初めての税務調査でやっておくべきこと・注意すべきこと

税務調査という言葉に、漠然とした不安を抱いている経営者の方は少なくありません。

実際のところ、税務調査は企業や個人事業主が正しく税金を納めているかどうかを確認するために、税務署が行う公式な手続きです。

しかし、調査の対象になるかどうかは事前に予測することが難しく、ある日突然、税務署から電話がかかってくるということも十分にあり得ます。

調査の頻度や時期にはばらつきがあります。

毎年のように調査を受ける企業もあれば、10年以上一度も調査が入らない企業もあります。

では、税務署はどのようにして「調査に入る企業」を選定しているのでしょうか?

詳しく説明していきます。


■ 税務署が調査対象を選ぶ基準とは?

調査を行うのは税務署ですが、その選定には一定のロジックがあります。

すべての企業が一律に調査されるわけではなく、企業ごとの業種、業績、過去の申告状況などを総合的に判断し、調査の優先順位を決めています。

企業は税務署によって以下のように分類されることがあります。

  • 継続管理法人:過去に不正経理があった、または疑われた企業。定期的な監視対象。
  • 循環接触法人:不正の可能性が高いとされ、他企業にも波及の可能性があるため要注意とされる法人。
  • 周期対象除外法人:経営者の交代や事業規模の急激な変化など、申告内容に大きな変動がある法人。長期的に観察される対象です。

こうした分類に該当する企業には、3年に1度のような比較的短い周期で調査が入るケースもありますし、10年以上経ってから調査が入るような企業もあります。


■ 調査対象になりやすい企業の特徴

次に、調査対象として選ばれやすい企業にはいくつかの傾向があります。

  1. 黒字が継続している企業
     税務署としても、赤字企業よりも黒字企業の方が徴税の成果が見込めるため、調査の対象になりやすい傾向にあります。赤字企業に調査を行っても、徴税につながらず、コストだけがかかる恐れがあるためです。

  2. 急成長中の企業
     売上や利益が急増している場合、適正な申告がされていないリスクが高いと判断されやすくなります。特に設立後数年で急激に業績を伸ばしている企業は、申告漏れや処理ミスが起きやすいと見なされ、調査の対象になりがちです。

  3. 非経常的な経費が多い企業
     退職金や貸倒損失など、一時的で高額な経費が多い場合も注意が必要です。
    経費の内容が明確でない、あるいは妥当性が確認できない場合、不自然に利益を圧縮していると疑われやすくなります。

このほか、外注費の増加、不自然な関係会社との取引、役員報酬の急変動などもチェックポイントとなります。

複数のリスク要因に該当している場合、税務署は調査の優先度を高く設定する傾向があります。


■ 実際の調査で見られる主なチェックポイント

税務調査が実施されると、調査官は帳簿だけでなく、会社の実態や経営者の説明内容まで幅広く確認します。
とくに注視されやすいポイントは以下の通りです。

  • 売上計上のタイミング
     商品やサービスを提供したタイミングで売上を計上する「発生主義」が原則です。これを無視して入金ベースで処理していたり、翌期にずらしていたりすると、売上の過少申告として指摘される恐れがあります。

  • 交際費の使途の妥当性
     飲食代やゴルフ代などが「本当に業務上必要な支出だったのか」がチェックされます。社長の趣味や家族との旅行など、私的な支出を会社の経費として処理していないか、細かく聞かれることがあります。

  • 在庫の計上
     在庫は利益に直結する項目です。期末の在庫評価が過小であれば、利益を意図的に減らしていると見なされかねません。在庫表の信ぴょう性や保管状況が問われるケースもあります。

  • 人件費の実在性
     実際には存在しない人への給与支払い(いわゆる架空人件費)も、調査対象です。とくに現金で給与を支払っている場合や、履歴書や雇用契約書がない場合は、調査官から厳しく追及される可能性があります。

■ 調査で不正を疑われないために

税務調査で最も避けたいのは、「知らなかった」「ミスだった」では済まない“重大な指摘”を受けることです。

たとえ悪意がなかったとしても、証拠が曖昧で説明ができなければ、追徴課税や重加算税の対象になる可能性があります。

そうしたリスクを回避するためには、日頃から以下のような備えが重要です。税務調査は、日々の積み重ねの「結果」です。普段からの丁寧な記録と説明可能な処理が、最大の防御策になります。

調査が入る前から、いつでも対応できるような体制を整えておくことこそ、経営者の重要なリスク管理といえるでしょう。

まとめ

税務調査では、形式的な帳簿チェックだけでなく、会社の実態や経営者の姿勢までが見られています。

調査官の質問は「無関係な雑談」に見えても、その裏に意図が隠されていることが多く、油断は禁物です。

特に、売上計上の時期・交際費・在庫・人件費といった項目は重点的に確認されるため、普段から正確な処理と証拠の保管を徹底しておくことが重要です。

税務調査において最も有効な対策は、「あらかじめ何を見られるかを知り、準備をしておくこと」。

顧問税理士との事前の打ち合わせや、シミュレーションによる対策も忘れずに行いましょう。

さらに詳しく知りたい方はこちら↓の動画もおすすめです。

ぜひご視聴いただければと思います。