まだまだ続く「インボイス」
いつも大変お世話になっております。税理士法人クオリティ・ワンです。
今月でインボイスが始まって1年となりますが,まだまだ質疑応答集が更新されています。
そこで,今回はこの1年を振り返り,インボイス制度の盲点に触れたいと思います。
導入当初から存在していた「柔軟運用」
インボイス制度の8割控除
(税抜経理と8割控除)出展:消費税経理通達関係Q&A
問3 当社(飲食業)は、令和5年 10 月1日に免税事業者から国内にある店舗用の建物を取得し、
その対価として 1,100 万円を支払いました。
当社は税抜経理方式で経理をしていますが、この場合の課税仕入れに係る法人税法上の取扱いはどうなりますか。
【回答】
支払対価の額のうち、80 万円を仮払消費税等の額として取引の対価の額と区分し、
1,020 万円を建物の取得価額として法人税の所得金額の計算を行うことになります。
また、80 万円を仮払消費税等の額として取引の対価の額と区分しないで法人税の所得金額の計算を行うことも認められます。
なお、簡易課税制度又は2割特例制度を適用している場合には、100 万円を仮払消費税等の額として取引の対価の額と区分し、
1,000 万円を建物の取得価額として法人税の所得金額の計算を行うことも認められます。
制度開始後に導入された「柔軟運用」
自動販売機特例等の適用で帳簿に住所記載は不要
一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除を適用できる「自動販売機特例」(自動販売機の飲料等が対象)、
「回収特例(3万円未満)」(施設の入場券等が対象)について、帳簿に自動販売機等の「住所又は所在地」の記載が必要とされていました。
しかし、事務処理の簡素化の観点から、「公共交通機関特例」(3万円未満の電車の運賃等が対象)などと同様に、同記載を不要となりました。
従業員の立替払の経費精算で緩和的な対応
従業員が立替払をした費用の精算に当たり、宛名に従業員の氏名が記載されている簡易インボイスを受領した場合、
宛名として会社以外の者の氏名又は名称が記載されているため、会社がその簡易インボイスを保存しても仕入税額控除を適用できません。
ただし、従業員が会社に所属していることがわかる従業員名簿と、従業員の氏名が記載された簡易インボイスを合わせて保存することで、
その費用に係る請求書等の保存要件を満たすこととして、仕入税額控除を適用できます。
返信用封筒に貼付した郵便切手(帳簿特例を適用可能)
郵便切手類のみを対価とする郵便ポスト等への投函による郵便サービスは、
一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受けることができます。
返信用封筒に貼付した郵便切手類(自身が購入したもの)により返送を受けるものも同様に、
帳簿のみの保存で仕入税額控除を適用できます。
金融機関の振込手数料等は1回分のインボイス保存でOK
金融機関の入出金手数料や振込手数料に係る仕入税額控除の適用について、
金融機関ごとの「通帳」や「入出金明細等」と合わせて、その金融機関における任意の一取引
(一の入出金又は振込み)分の簡易インボイスを保存することで、仕入税額控除を適用できます。
(2割特例と簡易課税制度)提出可能時期にご注意!
簡易課税制度を適用して申告する場合には、原則として、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに
「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
この点、2割特例の適用を受けた事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間中に
納税地を所轄する税務署長にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した
「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、
その課税期間の初日の前日に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出したものとみなされます(平成28年改正法附則51の2⑥)。
例えば、令和8年分まで2割特例により申告を行った個人事業者が
令和9年分から簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、令和9年中に「消費税簡易課税制度選択届出書
(令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載したもの)」を提出すれば、
令和9年分から、簡易課税制度の適用を受けることができます。(下図参照。)
(注) 簡易課税制度を適用して申告する場合には、2割特例と異なり、
申告時の選択ではないため、事前の届出が必要となりますので、ご留意ください。